“加護”について

“加護”まわり、十中八九言葉足らずできちんと伝わっていないだろうなぁ……(大変申し訳ございません)と思ったので補足です。


◎そもそも“加護”とは?

 本編での言葉を借りるなら「その世界に直接干渉する力」を持たない、「“世界を認識して存在させる”ことが役目の神」が「生まれたての未分化な存在を認識しやすくするために」「女王の花と王の盃を介して」与える「“加護”という名の外殻」。

 これだけ聞いてあぁそういうものね、とご理解いただけた方は次の「◎“加護”とセレブレストライトorカーセルネクタルの関係」から読んでください。

 便宜的にイメージしていただきましょう。花壇があります。何かの花の種を植えるとしましょう。植えたばかりではもちろん芽は出ていないし、一見何も植えていないように見える。でも、「ここに種があってこれは○○という花の種ですよ」という小さな標識をその近くに置いておきます。こうすればここにある種が何の花の種であるのか分かりますよね。芽が出ても花が咲くまで何の花か分からなかったりもしますし。現実でもたまに木とかにネームプレート的なものついてるじゃないですか。あんな感じです。

 さて、この「種」にあたるのが浄化世界、即ちセレブレストラとカーセルベレスの住人です。世界の観察者である神様は、住人がどんな存在なのかきちんと認識しなければなりません。ですが考えてみてください。生まれたばかりの赤ん坊のうちから「将来この子はこんな人になる」とはっきり断定できるでしょうか。できませんよね。その人がどんな存在なのか、神様側も最初は分からない。だからこそ標識であり外からはっきり存在しているということが分かるものが必要なんです。そこで一律に仮の外殻を与えておいて「さしあたってこいつはこういう存在だ」という認識を確立する。やがて成長してその人の自我とかアイデンティティが確立したら、もう殻は要りません。“加護”の消失となります。堂々と咲いているヒマワリに「ここに植えてある花はヒマワリです」という看板は必要ないのです(あくまでたとえ話的な意味で)。


◎“加護”とセレブレストライトorカーセルネクタルの関係

 さて、本題に入ります。大抵の方はこう思われたのではないでしょうか。「なんで“加護”とセレブレストライトが反応してローズギアが動くわけ?」と。

 順を追って説明します。まず、セレブレストライトとカーセルネクタル(血鋏を構成する赤いどろどろとした液体、刃の部分)について本編から引用します。浄化世界の「均衡が崩れた故に過剰な歪みが凝固」したものがこれらです。イリスが狂ったことで本来セレブレストラに送られるはずだった負の歪みがカーセルベレスへ、カーセルベレスに送られるはずだった正の歪みがセレブレストラへ、こうして本来送られてこないはずの歪みが蓄積されてしまったのです。これもたとえ話にすると……お米を食べる人とパンを食べる人がいたとして、彼らには毎日それぞれにお米とパンが配達されるとしましょう。ところが配達業者の手違いでお米を食べる人の元へパンが、パンを食べる人の元へお米が届くようになってしまった。捨てるわけにもいかず、かといって食べるわけにもいかず、仕方ないから彼らはその間違って届いたものを家の棚に保管しておくことにしました。ちょっと無理があるけどこんなイメージで間違いではないです。

 つまり元をただせばセレブレストライトは正の歪みであり、カーセルネクタルは負の歪みなのです。そしてセレブレストラは負の歪みを浄化する世界──言い換えれば“正”寄りの世界なわけです。“正”寄りの世界を存在させている神もまた“正”なわけです。そして“加護”は神様が与えるもの。“加護”が“正”の存在から与えられたものであるからこそ、正の歪みの塊であるセレブレストライトと共鳴するのです。


 一言で言えば「“加護”自体がもともと“正”の要素を帯びているから」。


 このことは22話の以下の図でさりげなく示した(“加護”の色が正負の歪みと同じ)のですが多分ここまで読み取った方はいらっしゃらないと思います(重ね重ね説明不足ですみません)。

「共鳴って具体的にはどういう状態?」と思われたかもしれませんが、外殻とセレブレストライトがくっついちゃってる状態みたいなイメージで結構です。くっついちゃってるからその人の意思に従って動くわけです。カーセルネクタルの場合はこの説明の正負を逆転させてください。

 ここで「“加護”は神様が与えたものなんでしょ? “加護”(=外殻)の中にいる人の意思で動くものなの?」という疑問が浮かんだかもしれません。この疑問については「与えたのは神だけどある程度の形は中の人が変えられる」と言っておきます。レンタカーみたいな。車の持ち主は店だけど実際に車を動かすのは利用者じゃないですか。でも車自体はお店のものです。それと同じく、外殻の形はその人自身が多少なら変えることができるけど、“加護”がいつ消えるとかそういう“加護”の存在そのものを支配しているのは神様です。


◎“加護”が破れるってどういう状態?

  たびたび出てきた「“加護”が破れたから一時的にローズギアが使えない」という話の仕組みもご説明します。“加護”は「こいつはこういう存在だ」ということを神様が認識しやすくするために与えるものでしたね。そして“加護”が破れる条件として本編で言われていたのは「ローズギアを使いすぎること=戦いすぎること」でした。

 端的に答えだけ言うと「戦うという一つの意思がつきぬけた時、その行為がその人自身の確固たる存在理由となり、神様が『こいつはこういう奴なんだな、もう“加護”いらねーじゃん、外しとこ』という認識誤認を起こした結果、一時的に“加護”がなくなる状態」が“加護”が破れるという状態です。つまり別に戦いすぎるだけが“加護”消失の条件ではないのです。ある一つのことに極度に集中した場合に起こりうる現象です。ただ、普段生きているだけでは“加護”の存在を感じ取ることはできない&“加護”を利用して何かを行うということがローズギア(あるいは血鋏)を使用するということ以外ないのでこれまで報告されている“加護”が一時的に消える理由は「戦いすぎること」と思われているというお話。

 とはいえ「神様アホなの?」というのはお門違いな批判です。彼らは人の姿をしてこそいますが要は浄化システムの一部なのでその辺の判断は非常に機械的なものです。ある許容値を超えたら“加護”はオフ!みたいな感じで世界を管理していると思います。

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